2014年01月02日

報告は必要だったか?

 「蜂アカデミーへの報告」は、既刊「吉野大夫」と同じく軽井沢町追分が舞台となっています。私たちが主に夏の間過ごす山小屋に巣を作ろうとするスズメ蜂と父・後藤明生の「仁義なき縄張り争いの記録」です。ほぼ実話に基づいており、実際父はスズメ蜂に刺され意識もうろうとなり、救急車のお世話になりました。第一章の書き出しは「わたしは昨年、スズメ蜂に刺され、九死に一生を得た」とあります。しかし、読者の誰も、この件について心配する気になれない、というのは、何故なのでしょう?
 私が子供の頃、父についてどうしても受け入れられない一面がありました。それは動物に対して無慈悲な、というより残酷なところでした。一番最初の記憶は私が幼稚園児くらい、当時住んでいた団地の敷地内で黒い小さなねずみを見つけ、なぜかとても人なつこかったため、なでたり抱いたりしてかわいがっていました。それを偶然とおりがかった父に見つかり、あろうことか父はゴミ捨て場にあった粉ミルクの空き缶にねずみをいれてふたをし、私の目の前で焼却炉に投げ込んだのです。もう40年以上前の出来事なのに、今でもミルクの赤い缶の色と共に脳裏に鮮明にこびりついています。
 追分でも蛇を見つけると杖や木の枝で攻撃し、足で踏んづけて息の根を止めるまで容赦しない。毒を持っているかどうかなんて関係ありません。死骸を見る目の勝ち誇った輝きが、子供心に本当に恐怖でした。
 「蜂アカデミーへの報告」に描かれている顛末も、もともとシロウトはやらなくてよい蜂退治をした結果ひどい目にあったわけで、それを「蜂アカデミー」などといううさんくさい団体?に向けて報告してやろう、という根性と図々しさにやや呆れます。もし、蜂退治の現場に私がいたなら、多分数日は父と口をきく気になれなかったと思います。「蜂は刺す、刺されると死に至る危険がある、だから殺すべきだ、いや殺しても良い、」という考え方が気に入りません。

 しかし、作品としては、相変わらずの無邪気なまでの無責任さでどうでもいいこと、例えばハエ叩きの改造とか、虫取り網の洗濯とか、に執着するかと思えば、蜂の被害にあった方のご遺族に会いに突如大分まで足を運ぶという行動力、ご遺族のお話の聞き取れない部分を、聞き返しも裏とりもせず「・・・」ですませるという暴挙、などつっこみどころ満載で、「報告」は不完全だが面白いといわざるを得ない、と感じています。
 ちなみに後年父は、大病をしたせいもあるのか、改心?したようです。スポーツのように虫をハエ叩きで打ち落とすこともしなくなり、蛇にも寛大になりました。ほほえましいエピソードがあります。ある時期父が好んでいた散歩コースの近所にテニスコートがあり、打ち損ねたボールがフェンスを越え、道路脇に転がっているのを集めるのが、父の楽しみの一つでした(集めたボールを戻さず、持って帰ってしまうのが父なのですが)。大体一日に2,3個拾うのですが、その日も拾ったボールを手に歩いていると、リードをぶら下げたまま飼い主から離れて歩いている犬がいました。こちらに興味がありそうに見ている犬に父は「あの犬にボールやろうかなあ」とつぶやいたのです。これもまた、この先ずっと私の脳裏に鮮明にこびりつき続ける記憶、というより思い出、といえるものでしょう。
posted by アーリーバード・ブックス at 23:09| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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